お茶にしましょうか
06.変わりゆく根源
Scene17 変わりゆく根源
この時が、何時でも幸せなのです。
今日は、誰も居らっしゃらない場所を、確保することが出来ました。
大きな木の木陰です。
私はそこで、毎日の日課である、昼休みの練習をしている最中でした。
リョウさんの音を聴けることが、私にとっての幸せな時であるのです。
どれ程、気持ちが乱れている時でも、私の体、全身を使って音を発すれば、落ち着かせることが出来るのです。
基礎練習の途中まで来たところでしたが、無性に曲を奏でたい気分になりました。
ファイルの楽譜をめくっていくと、あの曲がありました。
私に自信をもたらしてくれた、セレナーデです。
果たして、あの方に届いたでしょうか。
楽譜上の音符を目でなぞりました。
優美に踊っているような姿たちを見ていると、ますます感性がくすぐられます。
何頁かめくった後、何気なく、目に留まった曲があったのです。
これにいたしましょう。
優しい曲調の、ロングトーンが多い曲を選びました。
ビブラートをこれでもか、と言うほどにかけます。
私の体を包むような、丸に似た音に、より添える気がするのです。
とても心地よいのです。
さて、しかし文化祭の有志発表では、皆さんどうだったのでしょう。
少し不安はありました。
しかし、私は楽しめたのです。
それで、不安は全て、消し飛びました。