お茶にしましょうか
「俺は、迷惑でしかない」
「そんな。今、こうやって自主的に鍛えてみえるじゃありませんか。そんなこと―
「実際にそうなんだ」
私を遮った彼の声は低く、攻撃的で、またも彼らしくはありませんでした。
こんな江波くんを見たのは初めてでしたから、私は少し困ってしまいました。
そして、彼の口が止まる気配は一向にありませんでした。
「監督は、最後だからといって、俺をレギュラーに入れてくれているのだと思う。
それなのに俺は…期待に応えられた例しが無い。
自覚しているからこそ、自分なりに出来ることをしてきた、つもりだった。
でも、どうしても周りの目が気になるんだ。どれだけ努力したって、俺より上手い後輩なんて、山ほどいるのに…」
「それでも頑張るということは、何かを信じている、ということではないのですか?」
余りにも雪崩の様に語る彼の力になりたいと思い、気づけば、私は宥める様に割って入っていました。
彼の瞳はこの時も、どこか寂しさを帯びている様でした。
「…自分や、仲間を信じているからこそ、ではないのですか」
「信じていたって、駄目なものは駄目に決まっている」
「勝手に決めるのは、江波くんではありませんか。貴方以外の方々の気持ちはどうなるのですか?」
「チームにとっての不安要素は…取り除かれるものだ。俺は、明らかに足を引っ張っている。
自分でわかっているから、決めた…。みんなのためを思って、役を、降ろしてもらおう、と思う…」
「何を言い出すのですか!」
出会えて間もなく夢中になり、やっとのことで貴方の活躍を目にすることができたといいますのに。
何よりクッキーを渡しにお邪魔したあの昼休み、よく覚えております。
あんなにも仲の良さそうな仲間の方々が江波くんの「やめる」だなんて決心を聞けば、どう思うことでしょう。
いくら考えに考え、至った答だったとしても、私には納得がまいりません。