Contrary
不確かな情報が漏洩すると余計な混乱を生む。
それを分かっているからこそ、BARなんて場所を選んだのだと翔音は察した。
「Tenebrae……か」
「翔音さん、何か知ってるよね」
小さく呟かれた言葉に反応したかのように、問いかける輝刃。
周りにいたメンバーも翔音を見つめる。
「俺は何も知りませんよ」
「嘘だ」
「どうしてそう思うんです?」
「俺たちと入れ違いに出ていったあの男」
輝刃は翔音から目をそらすことはない。
また、翔音も輝刃から目をそらすことはなかった。
流れる沈黙。
この短時間で何度重い空気になっただろう。
「彼がどうかしましたか?」
沈黙を破ったのは翔音だった。
素知らぬ顔で返す翔音に苛立ったように言葉を紡いでいく輝刃。
「あいつはTenebraeの1人でしょう。
それに、ここから出る時に看板をclosedからopenに変えているのを見た
それって、翔音さんと親しいってことだしあいつは翔音さんと2人で話したいことがあったってことでしょう?」