Contrary
「看板は俺が頼んで裏返してもらっただけかもしれませんよ?」
「それはない」
「何故です?」
「美羅(みら)と織弥(しきび)が店の中にいたから」
真剣な瞳が翔音を射抜く。
そう。
このBARの扉にclosedの看板が下げられている時に入って来るのは白鷺とレキくらいであったのだ。
その他の客はもちろん、希掠もopenの時しか入ってこない。
白鷺がopenにして帰ったあとに彼等……美羅と織弥が入って来た。
その後にopenをclosedにわざわざ変えて入って来たのかレキというわけだ。
そして、レキの手によって再びopenに変えられたBARに輝刃達が入って来たんだ。
余程親しくなければ勝手に看板をいじることはしないだろうし、人に聞かれて困る話であるからこそ人払いをしようとしていたのだろう。
この一瞬でここまで推測した輝刃に感心する翔音。
翔音にとって事実を見破られることなど、どうでもいいことであった。
ただ、レキとの関係を他者に知られるわけにはいかなかった。
それを知っているのは翔音本人とレキだけ。
「あいつはTenebraeのレキ」
「……よく分かりましたね」
「一度見かけたことがあるから」