Contrary
“希掠の総長は怖いよ”
いつの日かそう言っていたレキのことを思い出した翔音。
その時は意味が分からなかったが今なら分かるような気がしていた。
輝刃は希掠の総長である。
新村輝刃(にいむら きば)
彼は白鷺を潰した事が過ちであったことに誰よりも早く気が付き、被害を食い止めようとした人物だ。
しかし、時既に遅しとはこのことで輝刃が気がついた時には全てが終わる寸前であった。
暴走族だけではなく、組織を率いる立場ならば瞬時の判断や周りを見る余裕は何よりも大切なことだ。
トップの判断で何もかもが壊れてしまうこともあるから。
一瞬でそこまで判断できる人材なんてほとんど居ない。
だからこそ、互いに補い合うために副総長であったり幹部がいるわけなのだ。
……といっても、最後に決断を下すのは結局のところ総長なのだが。
翔音は恐ろしい判断力を持つ輝刃がどこか怖くなり、その顔をじっと見つめる。
「もし、翔音さんがTenebraeと関係あるなら……」
「どうします?」
「翔音さんといえど容赦しない」
一触即発。
この言葉がぴったりなくらいに張り詰めた空気が流れる。
しかし、その空気を打ち砕いたのは心の底から楽しむかのような笑い声だった。