Contrary




「此花のことを思い出してたんだろ」

『よく分かったね』

「俺もそうだったからさ」


何となく。
そういう片割れは、何を考えているか分からない表情だった。

この表情は僕は嫌い。
此花と初めてあった時に“つまらない顔”と言われた表情と同じだから。


「そういえば、兄貴から連絡があったよ」

『……珍しいね』


両親と長男は僕達とは不仲で今では関わりはほぼない。

ただ、次男である兄とは仲が良好で頻繁ではないものの連絡は取り合っている。

……というか、次男は長男と違って考えが柔和で暴走族なるものに入っていた。

そう。
暴走族……しかも、希掠だ。

新田 翔音(にった かおん)
本来であれば新田グループ……つまりは父方の会社を継ぐ後継者であるにも関わらず、それを蹴ってBARを自分で立ち上げ経営。

うざいほど僕達に絡んでくる元希掠の幹部メンバー……というか総長だ。

兄さんが新田グループを継ぐことを放棄した為に、父方と母方が苦肉の策で僕達に継がせようとしたものの、これまた兄さんが“今まで蔑ろにしていたくせに今更、親ヅラするんじゃねぇ!”と一喝。

そのお陰というか、そのせいというか……
父方と母方の会社が統合し、長男がどちら共を継ぎ経営を回しているらしい。

まあ、長男は経営の才能が皆無だったらしく火の車らしい。

その話を聞いた片割れが、この上なくあくどい顔で“ざまぁねぇな”と笑っていたのを僕はこの先絶対に忘れないだろう。


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