Contrary
これはいつものこと。
準備は僕で片付けは史桜。
史桜が片付けている間に僕は学校の用意。
僕と史桜との見分け方はカッターシャツの色が水色か白か。
僕が水色で史桜は白。
ほくろとかは区別できるような場所にはないし、髪型も話し方もあえて二人で揃えているし、身長は全く同じだし声色もほぼ一緒。
もう一つの見分け方は先に話す方が僕で後に話す方が史桜。
親と関わることはほとんど無かったために、親は僕達を見分けられない。
親戚も僕達をしっかり見ていたことはないだろうから見分けられないだろう。
無条件に声だけだとしても見抜くのは幼馴染みの一人である響葵くらいだ。
「史桜ー、片付け代わるよ。
着替え終わったから」
「じゃあ、食器拭くのだけお願いー
僕着替えてくるね!」
手をタオルで拭いて自室へと入っていく史桜を見届けて食器を拭いて食器棚へ戻していく。
すべての食器を戻し終わった頃に史桜が部屋から出てきた。
手に“白”のヘアピンを持って。
史桜は向かって左側の髪の毛をヘアピンでとめていて、しかもヘアピンは二箇所でバッテンにつけられている。
色は“水色”
史桜は手招きをして僕を呼び、全く同じ位置に同じように髪をとめた。
白のヘアピンで。
僕達は僕達が今着ているカッターシャツの色と“同じ色のヘアピン”をつけている。
見分けるための術を、全て交換したんだ。
これから学校に行って座る席も、授業で使う道具も全て交換する。
そう。
ただの“交換”なんだ。
「ねぇ、“鈴桜”」
「なぁに、“史桜”」
言葉の順序も交換。