Contrary
「大丈夫、大丈夫ー。もう“油断しないから”」
「そーそー!それと炉宮ー」
「ん?」
「「またハズレだね!」」
「……げっ、また入れ替わってんのか?
わり、気が付かなかった」
「「もー!そろそろ見分けてよぉ!」」
「お前らがそっくりすぎるのがダメなんだよ!」
炉宮は暴走族でもないし、のんびりというか楽観的だから僕たちがどれだけ怒ろうと気にしないだろう。
それに、炉宮は演技が上手い。
嘘をつくのがうまくて、その上物事の先の先まで読んで動いている。
普段は時の流れに身を任している傾向があるけど、たぶん本気になると怖いのは響葵じゃなくて炉宮だと思う。
未来が見えてるんじゃないかってよく史桜と話すしね。
実際、炉宮が真面目な話をする時は大抵当たるし、予想したことはハズレない。
多分だけど、周りのことを見ることに長けているからこその芸当なんだと思う。
余談だけど、史桜の嫌な予感っていうのもよく当たる。
だからこそ、なお一層今回の事は不安なんだろう。
「早く見分けられるようになってよねー」
「ま、今のままでも楽しいからいいけどねー」
「相変わらず生意気な双子だな!」
「えへへっ」
「ありがとー」
「褒めてねぇ!」
教室に向かいながらそんなやり取りをする。
僕たちがこういった会話をするのはいつものことだから、周りは“またやってる。”くらいにしか思わないだろう。
わざわざ会話の内容までしっかり聞き耳立てている奴なんていないだろうから、僕たちが入れ替わっている事は現段階で炉宮しかいない事になる。
まあ、もうすぐ一人増えるんだけど。
「おはよう。
鈴桜、史桜、それに炉宮。
今日は双子で面白いことしてるね。」