Contrary
すっと無表情になったと同時にいつもの声色と違い低く呟く。
こうなった史桜は、もうあの子……妃海ちゃんに必要以上に関わろうとはしないだろう。
ただでさえ警戒していたのに、自分の世界を壊されるかもしれない恐怖を抱えたままリスクを負って関わりに行くとは考えられない。
「いいオモチャだったと思うよ。
でも、リスクを背負ってそれで遊ぶほど僕は出来た人間じゃない」
「引っ掻き回すのはきっと楽しいよ?」
「…………だろうね」
「したくないの?“復讐”」
僕の言葉に小さく反応する史桜。
僕たちはもともとこんな性格だったわけじゃない。
まぁ、昔からお互いに依存してた部分がなかったわけじゃないけど、今ほど自他共に認めるほど異常だったわけじゃない。
もし、幼馴染みと今出会っていたら僕たちの世界に侵入するなんて出来なかっただろう。
二人で生きてきたのは事実だし、依存しているのも事実。
昔はお互いに似せることなんてしなかった。
自然に似ているような部分はもちろんあったし、敢えて似せて入れ替わったこともあった。
他人を今ほど極端に拒絶することはなく、僕も史桜もそれぞれに少ないながらも友達もいて、当たり前のように共通の友達もいた。
狂ったのは“あの日”からだ。
“あの日”から僕も史桜も互いしか信じなくなった。
唯一僕たち以外で信用して一緒にいようと思えるのは幼馴染みくらい。
「仮に復讐ができたとして……僕達に何が残るんだろう。」
「さぁね。
僕はそれを知るためにもやりたいよ」
「………………」
「もう一度、妃海ちゃんと関わってみようよ。
何かわかるかもしれないよ?」
「……鈴桜がそう言うなら、いいよ」
納得しきれていない感じだけどまあいいだろう。
きっと明日の朝になればいつも通りだから。
そしてその夜。
新たなシナリオの幕が上がった。
冷たい瞳でその様子を見ていた人影はただ無表情にその様子を見て小さくつぶやく。
“所詮その程度の覚悟か……”と。
次の日。
卑怯だと言われる手口を使う暴走族に襲われた転入生が風華に守られることになったという。
双子はそれを見て呆れたように、そしてほんの少しだけ楽しそうにつぶやく。
「「面倒なことになっちゃったね、“お姫様”」」