Contrary
そう言うと教室から出ていく響葵くん。
私はその場から動くことが出来なかった。
冷たい雰囲気に当てられたからじゃない。
隠し事を責められたからでもない。
拒絶されたからでも、容赦しないと言われたからでもない。
響葵くんの目が、鈴桜くんと史桜くんが時折見せる寂しそうな目と同じだったから。
「私……何かしたのかな」
その呟きは誰にも聞かれることなく消えていった。
嘘をつくことが悪だとは思わない。
何かを守るためには時には嘘が必要だから。