Contrary
「炉亜、どうした?」
「別にー」
問いかけても答える気は無いらしい。
その様子に悠葵はさらに苦笑いする。
そういえば、この二人は幼馴染みだったな。
それにしても人当たりがよくあまり人に対して好き嫌いがない炉亜がここまで嫌悪を露わにするとは珍しい。
「その人の名前、新田鈴桜・史桜…あと、埜間響葵なんじゃない?
それと……他学年から杏路 炉宮」
「どうして分かるの!?」
「幼馴染み…もしくは血の繋がった兄弟だから……かな」
埜間響葵と杏路炉宮。
確かに苗字が一緒だし、名前も似ている。
新田といえば、この学校で知らない者はいないのではないかと言うほど見た目も行動もそっくりな双子だ。
「A組で風華に入ってないのはひーちゃん以外では双子と響葵くらいだし、その3人といつもいるのはあいつしかいないからすぐに分かるんだよ」
“あいつ”と表現されたのは実の兄のことだろう。
そういえば、炉亜の口から家族について聞かされることは無い。
家には帰ってるみたいだし、数回しか会ったことはないが両親も優しそうな人だった。
炉亜も両親に対してはいつも通りだったしな。
ただ、よく考えると兄については存在こそ知っているものの、実際に見たことも話したこともない。