Contrary
粃が言うと話の流れがすっと変わった。
粃は出会った時から人の嫌がる手前ギリギリを見分けて他人と関わっていた。
無闇に踏み込むことはしないが、いつでも傍にいるようなそんな感じ。
「鈴桜君たちが私のせいで巻き込まれるなんて嫌だよ!」
「…………あのメンバーなら放っておいても大丈夫だと思うんだけどなぁ」
「悠葵くん、それはどういうことなの?」
幼馴染みである悠葵は特に心配していないらしい。
それは炉亜も同じようで、先ほどの空気はなかったかのように話を聞いている。
「いや、双子は今はどうか知らないけど響葵はある程度喧嘩できるはずだから」
「……あいつも多分出来るよ
昔から無駄に器用だったからね」
悠葵と炉亜の言葉を聞いて妃海以外は護衛をつけなくてもいいのではないかと思った。
正直、妃海以外の人間を引き入れて守りきれないときだってある。
何人もの人間を一度に守れるほど俺達は出来た人間じゃない。
所詮は高校生だ。
仮に新田が喧嘩できなかったとしても、あと二人ができるなら逃げることくらい出来るだろう。
薄情だと思うか?
そう思われても構わねぇ。
俺の役目は目の前にいる風華の奴らを守ることだ。
他の奴を守って風華の奴らがやられましたじゃ話にならねぇ。
「何かあってから……って訳にはいかないから、定期的に様子見程度でいいんじゃないかな?」
「それが得策だろうな」
「じゃあ、もう話し合いは不要だね」
粃の提案に俺が賛同して、悠葵が締めくる。
粃の横に座っていた妃海の不服そうな顔に気がついていなかった訳では無い。
だけど、誰も触れなかった。
これは。
風華の決定だ。