Contrary



「來田 妃海(きた ひなみ)だ。
分からないこともあるだろうから教えてやれよー」

「來田 妃海です。
よろしくお願いします。」



鈴を転がすような高く透き通った声。
……あぁ、この子のことはきっと好きになれない。

本能的になのか理性的になのかは分からないけどそう思った。

後ろにいる片割れも警戒しているような感じ。



「席は……新田の隣だ。
新田ー!手ぇ上げろ」

「「せんせー、どっちの新田ー?」」

「隣が空席の方の新田だ」

「りょーかーい」



スッと手をあげる片割れ。
ふにゃりと笑っているのは見なくても声色で分かる。

席が分かったところで近付いてくる転入生。
改めて近くで見ると、騒がれるのも納得できる程の美人さん。

“この人が……”そう思った。



「教科書とか見せてやれよー」

「はぁい!」



片割れが返事をしたのを見届け、教室から出ていく担任。

カタン……と音がして転入生が座ったことが分かった。
どうせ次の時間の教員は来ない。

授業はほとんどない。
来る教員は先程の担任ともう一人の教員だけだ。

こういうところは不良校なのだと実感する。
逆に言えばここでしか実感できないんだけど……

まあ、授業がないのは僕としては嬉しいところなんだよね。

そう思いながら片割れの方を身体ごとむく。



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