Contrary



楽しそうにいう彼女に嫌悪の色を隠すことなく言い放つとさらに楽しそうに彼女は笑った。

……昔からそうだった。

彼女は他人が引く線引きのギリギリまで駆け引きのように近寄ってくる。

でも、だからこそ安心してられる。
一定以上は入ってこないから。



「よくアレと一緒にいて平然としてられるよな」

「平然となんてしてないわよ?」

「嘘つけ」

「本当だって。
何度殴ってやろうかと思ったか」

「殴ってやればよかったのに」

「そんなことしたら、私の株が下がるじゃない」

「計算とは怖い女」



本気で怖い。
でもこの潔さというかはっきりした感じが心地いいのだとわかっている。



「絆に嫌われるのは嫌だもの」

「惚気はいらねぇ……」



幸せそうに笑った彼女……粃をもし“あの人”が見ていたならうざいくらいに喜んだことだろう。

“恋の一つや二つしてるだろ?”なんて、いつも言っていたから。

まさか暴走族の総長が彼氏になっているなんて思ってもみなかっだろうけど。


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