Contrary
「よろしくね。えっと……」
「鈴桜!新田 鈴桜(にった りおう)だよ!
前にいるのが、双子の弟 史桜(しおう)!」
「気軽に史桜って呼んでね!妃海ちゃん!」
片割れ……鈴桜が挨拶をして僕のことを紹介したから、僕も転入生……妃海ちゃんに向かって挨拶をする。
気さくな笑顔。
明るい声。
自分の容姿がある程度良くて、かっこいいというよりは可愛いである部類であることは自覚している。
否が応でも自覚せざるを得ない状態であったのは確かだし。
だから、それを最大限に活かして他人と関わるのは僕達の常套手段。
「鈴桜くんと史桜くんね!」
「妃海ちゃん、校舎内の案内とかしてもらったー?」
「まだだよ?」
「「じゃあ、僕達が案内してあげる!」」
「今から!?」
「「もちろんっ!」」
クラスメイトはきっと自分が案内しようと思っていたのだろう、僕達をガン見している。
こういうのは早い者勝ちなんだよ。
それに下心丸出しの馬鹿どもと違って、僕も鈴桜も彼女自身に興味があるわけじゃない。
彼女が引き起こしてくれるだろう“楽しいこと”に興味があるんだ。
この子は何をしてくれるだろう。
この子はきっと僕達を楽しませてくれる。
そんな期待と同時に僕の中には僅かながらに警報も鳴り響いていた。
この子と関わってはいけない。
この子といれば何かが変わってしまう……変えられてしまう。
…………と。