Contrary
良い言い方をすればクール、悪い言い方なら冷たいのが史桜。
でも、あの事件があってから史桜は僕に合わせてテンションを上げていた。
僕が此花を失ったことに耐えられなかったから。
1人でボロボロになったから、史桜が1人じゃないよって合わせてくれたんだ。
自分もボロボロで苦しくて仕方なかったはずなのに。
「鈴桜、どうかした?」
「ううん!何も無い。
心配かけたお詫びに今日は美味しいもの作るね」
「お願いねー
響葵と炉宮も呼ぼうか」
「そうしよう。
2人にも心配かけたし」
史桜は元々冷めたやつだった。
親に捨てられたことを嘆いていたのは僕で、いつも隣で呆れたように慰めてくれていたのが史桜。
でも、今思えば史桜は諦めていたのかもしれない。
「ねぇ、史桜?」
「ん?」
「もし……もしもだよ?」
「なに、改まって」
「元の関係に戻りたいって言ったら……どうする」
「…………元の関係?」
史桜は首を傾げる。
時の止まった史桜の部屋を見て思ったんだ。
僕に合わせるために史桜は無理してあの日を記憶に刻みつけてるんじゃないかって。