Contrary
もしそうなら、僕は史桜に甘えてる。
僕らは双子だしお互いに片割れだと思っているけど、お互いのことを縛り付けていいわけじゃない。
「もう、僕に合わせなくていいよ」
「……その言葉の意味。
分かってるの?」
いつになく真剣な顔をして史桜は僕を見つめる。
互いの息の音だけが聞こえる。
沈黙の時間はきっと数秒にも満たないだろう。
それなのにとても長い時のように感じた。
言葉を発することを許されないかのように僕は小さく頷いた。
「……僕が進んでも鈴桜は平気?」
また一つ頷く。
「鈴桜。
元の関係に戻りたいってことは、鈴桜も向き合わなくちゃならない。
覚悟はあるの……?」
「…………」
沈黙。
「僕は鈴桜がちゃんと進めるならそれでいいよ。
でも、あの子が来たことでグチャグチャの考えのままの勢いなら……辛いのは鈴桜なんだよ」
「わかってる……」
「それでも……戻りたい?」
いつの間にか僕は俯いていた。
ゆっくり顔を上げると驚くほど優しい顔をした史桜が映る。