Contrary
「なんだ?この空気」
新たな来客のひとりが代表するかのように声をかける。
「…………いや。何でもねぇよ」
「……そうか」
新たな来客はすっと目をそらした彼にそれ以上は突っ込まない。
それ以上聞いても無駄だとわかっているからだ。
「それにしても、幹部が全員揃ってどうしたんです?」
翔音が思い出したように言う。
不思議なものでその一言で時が進み出したように感じた。
「Tenebraeについて話そうと思って来たんです」
「倉庫じゃ下の奴らに聞かれる可能性があるからな」
「聞かれては困るのですか?」
族同士の関係についての話だ。
聞かれても困ることはないだろうに……と言った顔をしている翔音に、苦笑いをしながら答えるのは新たな来客のひとりだった。
「Tenebraeの次のターゲットが希掠らしいから」
「……そうですか」
「まあ、確信ではないけどね」
「輝刃(きば)も気苦労が絶えないね」
「そうでもない。
俺が好きでやってるだけだから」