春に恋をしました
***

今日で桜が全部散ってしまう。
もし今日彼と出会えなかったら、もうこの場所に来るのは最後にしようと、そう心に誓った。


いるわけないか・・・
心の中でそう呟きながら、校庭に向かう。
校庭に向かう途中、新しい友達と親しそうに喋っていたり、カップルになってるのを見ると、少し羨ましくなる。

まだ親しい友達、作れてない。
あれだけ頑張るって言っていても、中々難しい。


桜の花びらが風で散り、一段と寂しくなった桜を見ながら、はっとため息をついている時だった。


「また会えたな」


見覚えのある声がした。


「あ!もしかしてあの時の?」


私は会えた嬉しさで胸がいっぱいになる。


「いつもここに来てたよな?」


「何で知ってるんですか!」


「教室からちょうど見えるから」


「じゃあ、来てくれてもいいのに」


彼は大きく息を吸うと、ふぅーと吐き出す。
なんか変なこと言っちゃったかな?

まだ一度しか会ってないのに失礼だよね。
謝らなきゃ。


「ごめんなさい…
まだ一度しか会ってないのに、あんなこと言ってしまって」


「俺もごめん。
行こうと何度も思ったけど、行けなかった」


「どうしてですか?あ!彼女さんが見てるとか…」


「まぁ」


やっぱり彼女いたんだ。
良かった。好きになる前に分かって。
今ならまだ戻れる!今なら・・・


「そうですよね
それじゃあ、また」


そう言い残し去ろうとした時、腕を彼に掴まれた。


「まだ何か用ですか?」


「俺、まだ君に聞いてなかった
どうしていつも来てたんだ?この場所に。」


「それは、桜が見たかったからです」


私は一つ嘘をつこうとしていた。
″本当は桜が全部散る前に、あなたに会いたかったからです″なんて言えない。


そう言ったらもう後戻り出来ない気がして…。


「そうだよな、普通」


落ち込んだ表情に変わる彼。
どうしたんだろう。
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