この恋に、名前をつけないでほしい
助けてくれた

今日も私は、男の腕に私の腕を絡ませる。
胸をわざとらしく当ててやると、男の鼻の下が伸びて私に夢中なのがわかった。

男は手を握りしめ、
「なぁ…、俺もう我慢出来ないんだけど」

いつもの流れだ。
うん、行こうとは言わず、いつものように手を握り返そうとしたとき今日は予定が入ってたことをハッと思い出した。

「ごめんね、今日は予定があるから…」

そう言うと、男はとてもびっくりした顔をした。
当然だ。学校一の男たらしが誘いを断るとは思いもよらなかったんだろう。

「え、どうしてだよ。いつもはノッてくれるじゃないか。」

「だから、予定があるの。」

「その予定ってなんだよ。俺よりも大切なのか」

ドキッとする。もちろん、目の前の男よりよっぽど大事な予定だ。
そう、あいつと唯一いっしょに居れる、大事な予定…

「あんたには関係ないでしょ、バイバイ!」

無理やり話を切ろうとして、男に背を向けるがガシッと腕を掴まれた。

「しつこいってば!離してよ!」

「お前、他の男と会う気なんだろ!?」

「彼氏面しないでよ!」

なかなか腕を離してくれない。
こいつ振り切るのがめんどくさいから、もう今日はあいつに会えなくてもいいや、と思ったとき、

「おい、離せよ」

と、声が聞こえた。



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