コンビニの遠藤君
「いらっしゃいませ~。」

声で分かるようになったのはいつからだっただろう。

あぁ。今日も遠藤君がいる。

嬉しいな。

私、堂島沙良の癒しはここにある。

チラリとレジに目をやれば、他のお客さんのお相手中だった。

明日の朝に食べるパンと牛乳、それからおやつのシュークリームを選んでレジに向かうと、

「いらっしゃいませ。今日も遅いですね。」
柔らかく微笑んで話しかけてくれる。

私の顔を覚えてくれていて、訳のわからない優越感が心地いい。
ちなみに今は夜の10時少し前だ。

「月末だからね。もうちょっとがんばればマシになるよ。

私も笑顔で答える。

「お疲れ様です。」

「ありがと。」

会話は、たったこれだけだ。

だけどこれで良い。深入りしない、間柄。

私の名前すら言ったことはない。

ほんのちょっとのやり取りが仕事で疲れたココロに染みる。

明日も笑顔でがんばれる力になる、私だけの秘密の癒しスポットだ。

「ありがとうございました。おやすみなさい。」

優しい声に見送られて、お店を後にする。


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