蝉が死ぬ季節


「はせー、飯買いに行こうぜー」


昼休みになってすぐに香久山は俺の席に来た。

毎日毎日飽きもしないでよく俺と飯食えんな。


思ってても言わないことを思う。


「おう。」


俺はいつもと同じ返事をする。


他愛もない会話をしながら購買に向かう途中の廊下で体育着姿の桐島蘭子とすれ違った。




「でけえな。」



香久山が小声でそういうので
男はみんな同じ頭をしてるんだなと思った。



「でも俺は桐島といつも一緒にいる坂本のほうがタイプだけど」


鼻の下を伸ばし、だらしない顔をしながらそんなことを告白された。



「誰それ」


「あの子。」


香久山が指差す頃には既に5m先の後ろ姿しか見えなかった。


桐島蘭子よりも小柄で、暑いのに真っ黒な長い髪を結びもしていない、見ていて暑苦しい子。



それが坂本さんの第一印象。


「かわいいの?」


「わりとな。」


「有名?」


「わりとな。」


「モテんの?」


「モテるらしーけど、彼氏は作らない主義らしいわ」


「へぇ、つまんなそ。」


「そうか?訳ありっぽくて俺的には興味深いけどなぁ」


「そういうのがつまんないんだよ。」


「はせはほんとに釣れないなぁ~」




本音、坂本さん、少し気になる。





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