sister
「……やだ」
「……」
懇願するような視線から思わず目をそらした。
明らかにがっかりした様子の莉菜。
でも、莉菜が嫌がることを想定して俺は髪を染めていた。
莉菜は今は俺の妹だと言うと非常に驚かれている。
理由は、莉菜はもともとの素顔が可愛いとはいえ、化粧ひとつしない地味な女だからだ。
莉菜はチャラくない。
真面目な優等生。
だから俺は、その兄としては不釣り合いな人間でいたかった。
釣り合いのとれた人間でいればいるほど、誰も俺たちが兄妹だと言っても納得してしまう。
血のつながりなんかない兄妹なんだから、似ているはずなんか無いのに。
そして、この現実はやっぱり漫画とは違くて、俺と莉菜がどんなに仲良くしていても誰も疑ったりなんてしなかった。
俺と莉菜が恋愛関係であるかどうか、なんて。