ぶっきらぼうな王子様
早歩きで悟を追い抜かす。
二人の姿を見ていたくなかった。
「あ、坂上」
悟を追い抜いたあと、悟はあたしに気付いて声をかけてきた。
「なに?」
自分で出そうとしたよりも、ずっと冷たい自分の声に少し驚く。
「いや、なんか様子変だったから。
どうしたのかなって思っただけ。
別に特に用事があるわけでもないからいいよ」
あたしの声に少し慄いたものの、悟はいつも通りぶっきらぼうに言った。
何が、なにが「いい」の。
もう話しかけないの?
今までみたいにあたしが話しかけても答えてくれない?
もう、あたしは、あなたの前からいなくなった方がいいの?
彼女ができたら、あたしはもう、用無し?
もう、わけわかんない。
「あっそう。
じゃあもう話しかけないでよ。
あたしからも話しかけないから。」
じゃあ、彼女と仲良くね、
って、酷くて、冷たい言葉が口から出てた。
自分が今言ったことに気付いて、2人からダッシュで逃げる。
なんで、なんで、こんなこと言っちゃうの。
ひねくれ者の、あたし。
そんなの全部あんたに対してだけなのに。