【短編】TIME RAIN
私は潮風が薫(かおる)海辺の港町であの人の帰りを待ち続けている。


2、3日で戻るからと言って家を出たまま…音沙汰のない彼。


どこで何をしているのやら…報せがないのは無事な報せとは、よくいったもので。


よそ様に迷惑かけてなければいいのだが…それだけが心配だった。




家は彼の実家だった。


港が見える高台に列なるように建つ家は、厳しい風雨に曝されてもびくともしない、立派な石垣に守られている。


私もこの家にいる限り、現実の厳しさから守ってもらえるような気がする。


通り雨も過ぎ、陽射しだけは暖かい太陽が顔を出す。


雨なんか降ってないよと小ばかにしたような秋の空。


女心と秋の空か…。


最近は男心の方が妙にしっくりするが…私だけかな?




彼の実家に私が居候し始めてから2年の月日が流れていた。


兄弟のいない独りっ子の彼…私より大分若い。


最近両親を事故で亡くしたばかりの彼にとって…私はどんな存在になるのだろう?


恋人と言い切れない歯切れの悪い感情が付き纏う。


友達以上恋人未満…昔聞いたことのあるフレーズが脳裏を横切る。




それでも構わない。


だって、彼を利用しているのは…






私の方だから。







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