ノンストップラブ
驚いたことに誠の食事作法は完璧だった。

育てられたおば夫婦のしつけが厳しかったのだろうか。

いや、そんな話しは今までなかった。

常に楽しかった思い出話しばかりだった。

誠のカトラリーを持つ手の動きは優雅でカチリとも音がしない。

隣りに座った姉のフィアンセが姉を気にしつつ

チラチラと誠の手元に目を向けているのが可笑しかった。

育ちの良さというものは自然に身につくもので

後着せできないことは誰もが知っている。

誠の存在は座っているだけで目に見えない清楚さと優美さが発信されていた。

全てに鋭い感覚を持つ祖母は

すでに解っているという満足気な目で誠を見ていた。

やはり連れて来なければよかったかと今更後悔しても遅い。

俺の思考は姉からのキツイ言葉で途切れた。

「優、戻ってきた方がいいわよ。」

「何、今更言うわけ?」

「おばあ様を見ればわかるでしょ。あの子が気に入ったってことが。」

「それとこれとがどう関係するわけ?」

「何とでも言ってなさいよ。今に泣きを見るわよ。優でなく、あの子が。」

くそっ、俺はその言葉が喉まで出かかった。
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