溺れてはいけない恋
「私は認めません。」
祖母は断固として意思を曲げないようだ。
「わかりました。」
俺は多良のその言葉にハッとした。
初めて聞く苦しい胸の内を含んだものを感じたからだ。
「出て行きます。」
多良の静かな口調に今度は祖母がキレた。
「おまえにそんな大それたことができるわけがない。」
「いいえ、今日にでも出て行きます。」
「そんなことはこの私が許しません。」
「最期まで至らぬ孫でした。」
「生意気を言うんじゃありません。」
「おばあさま、母をよろしくお願いします。」
多良が横に動いた。
「お待ちなさい。」
祖母が叫んだ。
多良はまだ言い足りないのか最後にこうつぶやいた。
「後悔しませんから。」
その時祖母の平手が飛んできた。
バシッと鋭い音が多良の頬を打った。
すぐそばでよろめいた多良を両手で抱きとめた。
「なんてことをするんですか。」
俺は暴力は嫌いだ。
気が付いたら口走っていた。
多良の祖母の冷たい視線を真正面から見据えた。
俺は間違っていないと思い
射抜くような視線を保った。
しばらくして祖母の方から目をそらせた。
「多良、何度言わせるの。私の意志は変わりません。」
祖母はそう言い捨てて部屋を出て行った。
俺の腕の中で震えるように泣き声を抑えていた多良は
肩を落とし両手を俺の胸に当てていた。
「君の芯の強さは、おばあさま譲りだと思う。」
俺の言葉に多良は驚いたように顔を上げた。
頬には流れた涙の痕があり
彼女の決められた悲痛な人生は
俺には無関係なはずだと今一度自分をいさめたが
もう後戻りはできない。
俺は関わってしまった。
中途半端に逃げ出すことはしたくない性格だ。
今日ここに来たことを悔やむだろうか。
そうならないようこれから考えなければならない。
祖母は断固として意思を曲げないようだ。
「わかりました。」
俺は多良のその言葉にハッとした。
初めて聞く苦しい胸の内を含んだものを感じたからだ。
「出て行きます。」
多良の静かな口調に今度は祖母がキレた。
「おまえにそんな大それたことができるわけがない。」
「いいえ、今日にでも出て行きます。」
「そんなことはこの私が許しません。」
「最期まで至らぬ孫でした。」
「生意気を言うんじゃありません。」
「おばあさま、母をよろしくお願いします。」
多良が横に動いた。
「お待ちなさい。」
祖母が叫んだ。
多良はまだ言い足りないのか最後にこうつぶやいた。
「後悔しませんから。」
その時祖母の平手が飛んできた。
バシッと鋭い音が多良の頬を打った。
すぐそばでよろめいた多良を両手で抱きとめた。
「なんてことをするんですか。」
俺は暴力は嫌いだ。
気が付いたら口走っていた。
多良の祖母の冷たい視線を真正面から見据えた。
俺は間違っていないと思い
射抜くような視線を保った。
しばらくして祖母の方から目をそらせた。
「多良、何度言わせるの。私の意志は変わりません。」
祖母はそう言い捨てて部屋を出て行った。
俺の腕の中で震えるように泣き声を抑えていた多良は
肩を落とし両手を俺の胸に当てていた。
「君の芯の強さは、おばあさま譲りだと思う。」
俺の言葉に多良は驚いたように顔を上げた。
頬には流れた涙の痕があり
彼女の決められた悲痛な人生は
俺には無関係なはずだと今一度自分をいさめたが
もう後戻りはできない。
俺は関わってしまった。
中途半端に逃げ出すことはしたくない性格だ。
今日ここに来たことを悔やむだろうか。
そうならないようこれから考えなければならない。