溺れてはいけない恋
誰が呼んだのか店の前には既にタクシーが来ていた。
三上は助手席に、多良は後部席へ俺より先に乗り
必然的に俺は多良の隣に乗り込んだ。
「銀座へ。」
運転手は三上の指示に忠実に従った。
「一輝さん。」
多良はタクシーの揺れにすっかり身を預け
爽やかに俺の名を口にした。
「はい。」
無視できないので一応返事はしたが
俺だけが心持ち緊張しているのかもしれない。
「これから申しますことに驚かれるのを承知でお願いしたいことがございます。」
「はぁ、何でしょうか?」
「突然のことで大変申し訳ございませんが、私にあなたの子を授けていただけませんか。」
俺は普通に仰天した。
この女は尋常ではない。
三上も承知しているのだろう。
何も言わず前方に目を向けているだけだ。
俺は非常に困った事態になり即辞退した。
「お断りします。」
「なぜですか?」
「理由など必要ないと思います。」
俺は多良の異常な願望に興味なかった。
そこで三上が口を出した。
「一輝、デメリットはない。受けろよ。」
俺は三上のいつものトーンに乱れもなく
先程終わった社内会議の議事録を読んでいるかのように
これは何でもないことだという態度に腹が立った。
俺は滅多なことでは怒りを感じない性分だ。
今は違った。
この二人はどうかしている。
そう思っているが全てを頭で整理しなくてはならない。
銀座のとあるレストランに着き
上階の個室に三人で収まった。
今夜はどんなにゴージャスな料理が出てきても
後で思い出せない味だろうと残念に思った。
三上は助手席に、多良は後部席へ俺より先に乗り
必然的に俺は多良の隣に乗り込んだ。
「銀座へ。」
運転手は三上の指示に忠実に従った。
「一輝さん。」
多良はタクシーの揺れにすっかり身を預け
爽やかに俺の名を口にした。
「はい。」
無視できないので一応返事はしたが
俺だけが心持ち緊張しているのかもしれない。
「これから申しますことに驚かれるのを承知でお願いしたいことがございます。」
「はぁ、何でしょうか?」
「突然のことで大変申し訳ございませんが、私にあなたの子を授けていただけませんか。」
俺は普通に仰天した。
この女は尋常ではない。
三上も承知しているのだろう。
何も言わず前方に目を向けているだけだ。
俺は非常に困った事態になり即辞退した。
「お断りします。」
「なぜですか?」
「理由など必要ないと思います。」
俺は多良の異常な願望に興味なかった。
そこで三上が口を出した。
「一輝、デメリットはない。受けろよ。」
俺は三上のいつものトーンに乱れもなく
先程終わった社内会議の議事録を読んでいるかのように
これは何でもないことだという態度に腹が立った。
俺は滅多なことでは怒りを感じない性分だ。
今は違った。
この二人はどうかしている。
そう思っているが全てを頭で整理しなくてはならない。
銀座のとあるレストランに着き
上階の個室に三人で収まった。
今夜はどんなにゴージャスな料理が出てきても
後で思い出せない味だろうと残念に思った。