復讐
「収穫0だな。」
「はい。」
ニシベと共に取調室を出た男。
彼の名はカザマ ユキオ警部。
この事件を担当する1人である。
「カザマさんはどう思います?
あの滅茶苦茶なサカグチの供述。」
「あれは心神喪失を狙う奴がよく使う常套手段だろうな。
自分の中のもう1人の自分の命令だとか、神のお告げだとか。
それに従って犯行を犯したと言って精神鑑定に持ち込むやり口だよ。」
「奴の家にガサ入れした結果、
相当の違法薬物が見つかりました。
弁護士は日常的なドラッグ使用による心神喪失を狙ってくるでしょうね。」
カザマは飲んでいたコーヒーカップを少し広い机に置くと更にそこに地図を広げる。
「いいかニシベ。
犯行のあったオオシマ夫婦の家がここだ。
ここら一帯の住宅街の割と奥まった場所にある。
大通りから住宅街へ入り、
ありとあらゆる家を無視してオオシマ夫婦の家に行った理由が“たまたま目に入ったから”はあまりに不自然だ。」
「はい。」
「必ずあるはずだ。
サカグチがあの家に行った理由、殺されたオオシマとサカグチを繋ぐ何かが。
動機を立証できれば精神鑑定の結果を覆すことができる。」
「今、モリヤマさん達がオオシマの仕事関係、学生時代の交友関係など洗いざらい調べています。」
「見つけるぞ。」
「はい。」