復讐
ニシベは納得できない表情を浮かべていたがカザマがそれを制し、2人は部屋を出た。
「モリヤマさんの件は完全に八つ当たりですよ!
結局サカグチがトラックにはねられたのは署の周辺でもない場所だったのに。」
「大丈夫だよニシベ。私は気にしていない。
市民に危害が及ばなかったことが大事だ。」
「こじつけって言われてしまいましたね。
いい線だと思ったんですが・・。」
「署長の言う通り、
あの時は状況からとっさに閃いただけで、
それを裏付ける証拠は何も無いからな。
サカグチが死んだ今、確かめる術もない。」
カザマはコーヒーを入れると椅子に深くもたれる。
「私はサカグチを有罪にするという事にこだわりすぎたかもしれないな。
・・・・本音を言おうか。
サカグチが死んで少しホッとしているんだよ。」
「それはまぁ・・・あいつが心神喪失で罪が軽減されて、また何年か経ったら世に放たれると思うと私も同じですよ。」
「しばらくはサカグチを脱走させた件でマスコミから叩かれるだろうな。
まだ落ち着くまで時間がかかりそうだ。」
脱走の話になるとニシベは少し思い詰めた表情を浮かべた。
「・・・ヤマダに“気合い入れろ”って言ったんですよ。」
「え?」
「1度サカグチが留置場で暴れて、私が対応した時がありましたよね?
その時ヤマダに喝入れたんですよ。
あのバカは多分・・それで昨夜・・・」
「ニシベ。お前もヤマダも責任を感じる必要は無い。皆よく頑張ってくれたよ。
とにかくヤマダの1日でも早い回復を祈ろう。」
カザマは飲み終えたコーヒーカップをゴミ箱に捨てるとフゥッと息をついた。
「・・もうこの事件は、
全て終わったんだ・・・。」