青い空の下、僕たちは今も




歩いてくるのは


「おはよ、棗」


低血圧で朝は何を言っても反応しないはずの


「……おは、よ」


はずの、桜花


「…槍でも降るのか?」


寝癖のないしっかりと整えられた髪型

それを見て呆けていれば、通りすぎていく桜花


「何してんだよ、棗」

「あ、あぁ、海斗…
いや、槍が降るかなって…」

「はぁ?
なに、寝ぼけてんの」


ケタケタと笑いながらくつ箱へと歩く海斗の後を追う


「てか、桜花ちゃんと千春って仲良かったか?」

「は?」

「ほらそこ
あ、お前千春ってわかる?」


千春

知らない、訳がない


「あー、桜花、紗綾と部活一緒だから」

「ほー、そういう」


二人が歩く方から目をそらしても
桜花の、笑った顔が視界の端をちらつく


「あ、そーいや、槍は降らねぇけど」

「まだ言うかよ…」

「わりわり
雨降るかもって

部活、ちゃんとあっかなー」


ボソッと呟く海斗の声は本当に憂鬱そう


「彼女、雨嫌いなんだっけ」

「おー、部活できねぇと機嫌悪いんだよ」


「…いい、な」



呟いた声は、海斗には聞こえなかったらしい



俺だって、雨は嫌いだ


< 34 / 45 >

この作品をシェア

pagetop