青い空の下、僕たちは今も




「強いな、紗綾」

「…大好き、だったからね」


まだ、今も

声にしてはいけない呟きが
紗綾の表情から透けて見える


本当に好きだったら、幸せを願えるもの?

じゃぁ、俺は…


「桜花が、したいようにすればいいと思ってる」


…本当に?


「…そっか、わかった」


紗綾の顔が、なにか言いたげに歪む

きっと俺の顔も、なにか言いたげに歪んでいる


気まずくなって目をそらすした先には、笑い合う二人

その瞬間、桜花の口が動いた


「…俺、行くわ」

「え?」


半分以上弁当を残して蓋を閉める


「雨、降ってきたし」


驚く紗綾を置き去りにして、教室まで走った


「嘘つき」


背中に呟かれた言葉に反応も出来ないまま


桜花の笑顔と唇の動きが、頭から離れない

本当に好きなやつには
あんな風に笑いながら“好き”なんて言うんだ

へー、そうなんだ
知らなかった

昨日聞いてきたのは一般論で嬉しいかどうかだったってことね

あー、うん、良かったじゃん

もともとお互い好きで付き合ってるわけじゃないし
あいつら別れるらしいし
紗綾はそれを望んでるし


なのに、なんだこれ


「…いてぇ」


幸せを望んでやれないのは
俺が桜花を好きじゃないから、なんて

それはそれで矛盾なわけで


「意味わかんねぇよ…」


繰り返す自問自答に答えは出ない

…本当に?


「あいつが好きとか…嬉しいわけねぇだろ」


ほんとは全部、分かってるのに

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