青い空の下、僕たちは今も


「棗…」


雨の音と桜花の声

ずっと、聞いていたいなんて


「…棗」

「…おう、か?」

「終わった」


疲れたような、でも、少し嬉しげな桜花の声に顔をあげれば


「…すげ」


昨日見たはずの、桜花の絵

その絵が全く形を変えて、キラキラと光って見えた


「苦しくて、辛いのも、激しいのも…
嬉しくて、楽しくて、真っ直ぐなのも…」


そういいながら俺を見つめる瞳は、しっかりと俺を映していた


「“恋”?」

「…そうだよ」


俺の手をとった桜花の瞳が揺れる


「…私のこと、好きって言った」


溢れる言葉に耳を傾けて


「…紗綾のこと追いかけなかった」


小さい音も聞き逃さないように


「…キス、した」

「それはお前もだろ」

「だったら!」


初めて、桜花の叫んだ声を聞いた


「棗の好きは、私と一緒?」

「その前提は、桜花が俺のこと好きってこと?」


桜花の描いた絵を指差しながら、笑う

小さく頷く桜花の目が少し揺れた


「それ以外に、何かあるの?」


こぼれる涙を、ずっと見ていたいなんて
最低なのかもしれないけど


「桜花、かわいい」

「…うるさい」


細い髪

小さく、けれど形の良い鼻

ふっくらとした、広角の上がった口


無愛想

思考回路が意味不明

人との距離感が分かってない


いつだって視界に入り込んできていたのは
きっと


「俺は、ずっと好きだよ」


桜花だったんだな


「…バカだな、」

「嘘」

「んでだよ」

「だって!!!…だって」


溢れ出る涙は綺麗で、ずっと見ていたいけれど


「…とりあえず、千春とのこと話せや」

「…紗綾のことも」


少しずつ、お互いを知るところから始めよう


恋をするために



fin.
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