青い空の下、僕たちは今も

雨の後





「果奈っ!」


美術室

外は雨

絵の具の匂いとキャンパスに向かう紗綾


「…海斗」

「え、っと…千春にここだって聞いたんだけど」

「…うん。今、ジュース買いに行った」

「そっか。てか、真っ白じゃん」


キャンパスをじっと見つめながら考えていることはきっと


「…最近、思うように描けなくて
って、そんな上手なわけじゃないんだけどね」

「たっだいまー!!」

「果奈」

「あ、海斗、やっと終わったのー?
はい、紗綾ミルクティー」

「ありがと」


そういってレモンティーを飲む果奈は
雨の日にしてはハイテンション


「紗綾、帰る?」

「…約束、あるから」

「…そか」


1年間、ずっと4人だった
ずっと一緒だから、だからこそ、踏み込めない部分だってある

それでも…


「頑張りなよ」


静かに言った果奈の表情はいつにないぐらい真剣だった


「…ありがとう」

「なにそれっ!照れるっ!」

「じゃあな、頑張れよ」


紗綾の瞳は、潤んでいるように見えた


「…ばいばい」

「またね」


紗綾に急かさずそう返した果奈も
悲しそうに見えた





「…もう、無理なんだな」


俺の家

グラスで氷の揺れる音

身に馴染んだこの場所は、4人での思い出も多い


「…バ海斗!!」

「何だよ」

「私たちが落ち込んでたら、二人が困るでしょ!」

「…泣きながら言ってんじゃねぇよ」

「うるっさい!!」


今日、無駄に元気だったのは、そのせいで


「…あいつらは、多分泣かないもんな」

「そうだよ!ぜーんぶ自己完結させちゃってさ!!
何も、教えてくれないで…
…馬鹿じゃないの」


隅の方で丸くなって泣く果奈は、子供みたいで


「…来んな、バカ」

「…ごめん」


そっと抱き締めれば、また溢れる涙


「なんで、ずっと一緒じゃ、駄目なのかなぁ」

「…欲張りだからな、みんな」


多分、俺らも


「送ってく」


そう言って窓を開ければ、もう雨はあがっていた


「たった、1年半だもんね…」

「たったじゃねぇよ」


まだ泣いている果奈は、きっと明日、泣き張らした目でいつもみたいに笑うんだろう


「楽しいこと、いっぱいあったじゃんか
あいつらにも…俺らにも」

「…そうだね」




晴れた雲

星の下

隣には大切な人


いつか、失ってしまう可能性だって0じゃないんだって

それでも


「ありがと、また明日っ」


そう、笑ってくれるなら


「…家の前なんですけど?」

「親父さんには内緒で」


大切にしたい


これから先も、どんなことがあったって




fin.

< 45 / 45 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop