青い空の下、僕たちは今も



「あのときの告白、まだ有効?」



そう聞かれたのは
私の高校受験を、間近に控えたある日



「…ずっと、好きですよ?」


あの日のように
笑ってそう言った

あの日よりは上手に笑えている気がした


それから、1年

私はあなたの走りを、一番近くで見続けた

あなたに好きと言い続けた


「ねぇねぇ、マネちゃん」

「はい」

「俺のフォームなんだけどさ――」


私はどちらかというと
走るよりも見る方が性に合っていたらしいく


「おー、なるほどね
気を付けてみるわ。

さすがマネちゃん!
これからも頼りにしてるからね」


先輩やお姉ちゃんが叩き込んでくれた陸上の知識は
こんなところで役に立った




「あ、お久しぶりです
部長」

「もう、部長じゃねぇよ」

「いいじゃないですか。
こいつじゃ、部長って感じしないんですよ」

「失礼だな、おい」


そう言って笑う先輩はこの1年、
やっぱり誰よりも綺麗に走っていた


今のエースよりも
強豪校の人たちよりも

やっぱりあなたが一番だった



もう、近くで見ることは出来ないけれど


「もう、部長も卒業ですね」

「そうだな」

「こうやって顔だしてくれることも
なくなるんすね」

「そうだな、東京だからな」

「遠すぎっすよー」


笑いながらそう言えるあなたたちが羨ましい


「でも、凄いっすね
推薦っすか?」

「まー、そんなとこ?」

「スカウトでしょ」

「どっちも、そんなに変わんねぇよ」


東京の有名私大

あなたはまた
私に背を向けて走り出す



「明日、部活休みになりました」

「どっか行く?」

「うん」

「どこ?」

「先パイプレゼンツで」

「うわっ、一番嫌なやつ」



帰り道


潮の香り

波の音


沈みきった夕焼け


見えるのは、鈍く輝く星々


繋がった手を映すには
月の光は少し心細い


「先パーイ」

「…何」


「好きですよ」

「聞き飽きた」


もうすぐ、先輩は卒業する


私たちの関係が、やっと一年を満たす頃に




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