お前だけが欲しくて
何とか仕事を終えて、会社を出ようとすると、絢斗が私の腕を掴んできた
「俺も、もうすぐ終わるから待ってて」
そう言って、絢斗は自分の席に行った
絢斗といれるのも後少しだと思うと、胸が痛かった
会社の休憩室で絢斗を待つことにした
これから絢斗に別れを切り出すと考えると泣きそうになってしまう
「凛じゃねぇか
昨日のことはあいつに言ったか?」
面白そうに聞いてくる奴を、睨み付ける
今、一番会いたくなかった
「社長には関係ないです」
「別れる時は、俺が慰めてやるよ」
笑いながら言う宮園が、堪らなく憎い
「もし、社長との事を言って、絢斗と別れることになっても、社長と関係を持つことは絶対にありませんから
じゃあ、私はこれで失礼します」
冷静を保ったつもりだけど、最後の方、声が震えちゃったかもしれない
泣きそうなのに気づかれたくなくて、逃げるように休憩室から出る
その時、宮園が私に声を掛けようとしていたことも、そのあと宮園が休憩室の椅子を怒りに任せて蹴ったことにも気がつかなかった