始まりのラピスラズリ
「え…、俺、名前呼んだことなかったか…?」
俺の言葉に、今度は椎名が固まる。
「ハル先輩、気づいてなかったんですか?
先輩いつも、私のこと、お前って呼んでましたよ…?」
「う…、それは、悪かった」
そう言って謝る俺を見れば、椎名はふっと笑う。
「もぉ…、先輩がそんなこと言うから、驚いて涙止まっちゃいましたよ」
「……ごめん」
「ふふっ…。ハル先輩、私の方こそ、ありがとうございます。
先輩があんな素敵な笑顔で、初めて私の名前を呼んでくれて、凄く、凄く嬉しいです」
「っ……!」
そう言って微笑んだ椎名に、
俺は、自分の胸が今まで聴いたことのない音を奏でたことを感じた───。