始まりのラピスラズリ
彼女は、俺を見て驚いたと思うと、少し駆け足で俺の元に寄って来た。
その距離、わずか1mほど。
「あ、あのっ……」
少し戸惑った様子で口ごもる彼女に、俺は鼓動を早めながらも違和感を覚える。
どうしたんだろう…。
さっき、名前が呼ばれた気がしたのは気のせいか、それとも彼女が呼んだのか。
普段、俺は名字か名前でしか呼ばれないから、ハルというのはもしかしたら別のやつのことなのかもしれない。
だって、現に俺は、彼女を知らない。
それに、ハルなんて、呼ばれたこともない。