始まりのラピスラズリ


「橘ー、お前確か、岩崎と同じクラスだったよな」


「はい」


確認すると、先生は先輩の手の上に鍵を置く。


「第2体育館の鍵。
球技大会の練習、あいつのクラスがいつも最後までやってるからな。
戸締りして職員室に持って来るように伝えといてくれ」


それだけ言うと、先生は部屋を出て行ってしまった。


先輩……?


残された私は隣にいる先輩を見上げる。


鍵を見つめる先輩がなぜだか少し苦しそうに見えて、私は思わず声をかける。


「先輩、ハル先輩」


「……っ」


先輩は私の声に反応すると、


「俺、行ってくるから、先に帰ってていい」


とだけ言って、部屋を出て行ってしまう。


その後を慌てて追いかけて私は言った。


「ハル先輩、私も行きます!」

< 33 / 427 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop