始まりのラピスラズリ
「そーいえば今さらですけど、今日は岩崎先輩と一緒じゃなかったんですね?」
食堂での一件の後、教室に続く廊下を歩きながら私は先輩に問う。
岩崎勇人(いわさきまさと)先輩。
ハル先輩の中学からの友達で、いつも一緒に行動している。
爽やかな笑顔が印象的な岩崎先輩もかなりのイケメンで、サッカー部のエースであり、チームを引っ張るムードメーカー的存在。
「あぁ。今日は部活のことで顧問に用があったらしい」
「なるほど」
「そっちこそ、いつも一緒にいる友達はどうしたんだよ」
先輩が言う友達というのは、私の中学からの友達のこと。
渡良瀬舞子(わたらせまいこ)。
茶髪のロングヘアがよく似合う美女。
いつも私を助けてくれて、勉強も運動も出来る、優しいお姉ちゃん系。
「舞子は今日、週番で。次の授業で使う道具の準備に時間がかかりそうだからって」
「ふーん」
聞いてきたくせに興味がない様子の先輩。
「俺、こっちだから」
そう言うと、階段を登って行ってしまった。
「クール……」
誰もいない階段を見つめて、私はボソッと呟く。
でも、今日は見たことのない先輩をいっぱい見れちゃったな…。
私は微笑みながら、自分の教室へと向かった。