始まりのラピスラズリ


「そーいえば今さらですけど、今日は岩崎先輩と一緒じゃなかったんですね?」


食堂での一件の後、教室に続く廊下を歩きながら私は先輩に問う。


岩崎勇人(いわさきまさと)先輩。

ハル先輩の中学からの友達で、いつも一緒に行動している。

爽やかな笑顔が印象的な岩崎先輩もかなりのイケメンで、サッカー部のエースであり、チームを引っ張るムードメーカー的存在。


「あぁ。今日は部活のことで顧問に用があったらしい」


「なるほど」


「そっちこそ、いつも一緒にいる友達はどうしたんだよ」


先輩が言う友達というのは、私の中学からの友達のこと。


渡良瀬舞子(わたらせまいこ)。

茶髪のロングヘアがよく似合う美女。

いつも私を助けてくれて、勉強も運動も出来る、優しいお姉ちゃん系。


「舞子は今日、週番で。次の授業で使う道具の準備に時間がかかりそうだからって」


「ふーん」


聞いてきたくせに興味がない様子の先輩。


「俺、こっちだから」


そう言うと、階段を登って行ってしまった。


「クール……」


誰もいない階段を見つめて、私はボソッと呟く。


でも、今日は見たことのない先輩をいっぱい見れちゃったな…。


私は微笑みながら、自分の教室へと向かった。


< 8 / 427 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop