眼鏡をかけるのは、溺愛のサイン。


恐る恐る渡すと、眼鏡をしている社長は目線を角砂糖に向けた。
そしてすぐに私に微笑む。


「ああ、ありがとう」

猫と犬とお花の三つを持ってきたけど、社長はクスクス笑っている。

「今度から一個でいいよ」
「え、あ、そうですよね。はい、心得ました!」


とっさに心得ましたとか変な言葉が出てきてしまい慌てるが、社長は呑気に猫の顔の角砂糖を手に取って指先で転がした。

「……可愛い」

なるほど。私への可愛いは、こんな風に可愛いと。小動物とかアニマル的な。


ホッとしたような、胸がちくちくするような複雑な気持ちの中、確かなことは一つ。

そのギャップは反則、です。

眼鏡をかけた瞬間の社長に、心臓を握られた。

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