眼鏡をかけるのは、溺愛のサイン。



「君の歓迎会をしたいんだけど」

「ほ、本当ですか!」

「ただ、片野さんはお孫さんが生まれそうなので、俺と二人だけど」

二人きり!?

「でもまあ、行くよね。予約したし」

私に考える暇も与えないほどに早急にパソコンの電源を落とし立ち上がる。

「君もすぐ支度して、一階で待ってるから」
「え、えええーっ」


有無も言わさず爽快に下りていかれるけれど、ちょっと待ってほしい。

一階で待ち合わせして社長と出かけるって、絶対他の社員に見つかるよね。

簡単に各部署の部長には挨拶と紹介してもらったけれど、誰が社員とか分からない。変な噂が立たないように、祈るしかない。






その後、社長に連れていかれたのはアクアリウムカフェだった。
居酒屋や大人っぽいBARや高級レストランかと思っていたのに、意外だった。

けれど社長が予約した席は、金魚の水槽で、赤や黒の金魚が泳ぐ丸い水槽を眺めながら食事をするのは楽しかった。


「す、すっごく可愛いですっ」

「だろう。来てみたかったのだが、一人では無理で」

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