眼鏡をかけるのは、溺愛のサイン。
「あー、私をダシに使ったんですか?」
冗談のつもりで聞くと、社長は眼鏡をかけながらまた柔らかいまなざしになる。
「……ばれたか」
反則だ。その甘ったるい笑顔は反則だ。
「しゃ、社長みたいに素敵な人なら、こんなカフェ一緒に行ってくださる女性がたくさんいると思いますけど。殺到しちゃうんじゃないでしょうか」
おさかなマシュマロが浮かぶソーダ―を、ぐるぐるストローでかき混ぜる。
するとお魚が海の泡になっていくように消えていった。
そうだ。今日ここに来たのは、自分が行きたかったからで、私はカモフラージュで、そもそもこれは歓迎会で――。
ごちゃごちゃ考えていた私を、社長はじっと見る。
眼鏡越しの社長のまなざしは、熱くて。触られてもいないのに、私の頬を熱くさせた。
「ダシに使ったのは、カフェの方だよ」