眼鏡をかけるのは、溺愛のサイン。
「悪かった。仕事が一件増えたから、明日資料集めしてもらうかもしれない」
「わかりました。大丈夫です! 頑張ります!」
眼鏡を外し、眞井さんは不機嫌だ。
「せっかくの二人の時間を邪魔されたな」
「お仕事ですから気にしちゃだめです」
「君は少しは気にしてくれないかな?」
なんか、言葉の端々から違う意味を含んだ感じが伝わってきて落ち着かない。
「あの、えっと」
すると今度は私の鞄が足元の籠で大きく震えだす。
慌てて携帯を取り出して、アラームを消す。
「電話? 出ておいで」
「い、いやあ、あのう」
こんな時に恥ずかしくて、耳まで熱くなる。
眞井さんから見た私は、きっと茹でたこに見えるだろう。
「きょ、今日から始まるドラマのアラームです」
「ドラマ?」
「録画が調子悪くて、でも見たくて、忘れないようにってアラームを設定してたんです」