眼鏡をかけるのは、溺愛のサイン。


「ちゃんとした秘書?」

「そう。こんな立派な会社の社長の秘書が派遣ってなんか上のモノとしての威厳がないし。もっと美人で仕事できるバイリンガルとか来るんでしょ?」

確かに、はっきり何でも言う人だ。全部私に大きなダメージが来る。

「彼女は優秀だよ。書類整理もタイムスケジュールも細かく丁寧だ。彼女も今年の新卒社員は右も左もわからない中、教育係に食い下がって頑張って仕事を覚えようとしている」

「それを怖がられずに社員に伝えられたらいいね。去年も一昨年も何人も泣かせちゃって」

 クスクスと笑う彼女が、確かに何でもズバッと言ってしまうので勇気があるなと思う分、嫌だった。

社長が気にしてることを笑うのが嫌だった。

ノックをして、確認する前に飛び出した。

「失礼します。社長、そろそろ休憩されてください」

「大丈夫よ。私とちゃんと休憩したもんね」

彼女は紙のパックから取り出したサンドイッチの最後の一口を口に放り込んだところだった。

よく見れば社長のデスクにも同じ箱に入ったサンドイッチが入っている。

「じゃあね。好き嫌いせず食べなさいね」
「うるさい」

眞井さんは、さきほど部屋から出ていく前より眉を顰めていた。
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