眼鏡をかけるのは、溺愛のサイン。
けれど空になった箱をつぶすとごみ箱に入れて、珈琲を飲みだす。
「休憩後は、面接だ。下の会議室へ行く」
立ち上がった社長に、いましがた帰ってきた私は慌ててお弁当箱を鞄に放り込んでノートパソコンの準備をして追いかけた。
エレベーターは先ほどの崎田さんが使ったであろうにも関わらず、戻ってきていた。
こんな細やかな気配りができるのかと感心してしまう。私も真似しなければ。
「社長、もう行かれますか?」
「ああ。沢渡を連れていくので、ゆっくりしておいてくれ」
眞井さんの返事に、立ち上がろうとしていた片野さんは座った。
そして私がエレベーターを開ける前に、さっさと社長がボタンを抑えて私に乗るように促してくれた。
出遅れてしまった。彼女とは大違いで情けない。
「先ほどの」
「はいっ」
言いにくそうに窓の外を見ながら、眞井さんは言う。
「さきほどの弁当箱は可愛かったな」