眼鏡をかけるのは、溺愛のサイン。
「え、ええー!? あれ、大学時代から使ってるウサギのお弁当入れですよ!?」
「ああ。よく似合ってる」
……また子ども扱いしてる。崎田さんの後だから仕方ないけど。
「あいつは言動がキツいからすまない」
「なんで社長が謝るんですか?」
確かに心臓がバクバクしたのは本当だけど、片野さんから聞いているので平気だ。
「……大学の同期だ」
「仲が良いってことですね。なるほど」
ちょうどエレベーターが開き、乗り込もうとしていた社員が全員社長の顔を見て背筋を伸ばしたのが分かった。
いきなり緊張したピリピリした雰囲気だ。
「こんにちは」
「ああ。休憩はちゃんと取ったか?」
「はい」
数人に声をかけるけど、緊張している様子が手に取って分かる。
そそくさとエレベーターに乗り、閉まる前にもう一度一礼していた。
「……普通に社員と交流しようとしただけなんだがな」