眼鏡をかけるのは、溺愛のサイン。

「私にもそう見えましたよ」

 会議室へ向かう廊下には、誰一人社員がいなかったのでついつい話してしまう。

「崎田さんは怖くないですが、でも社長が気にされてることを突く感じは嫌でした。社長が朝から、新卒社員のために心を配っていたのは知ってます。だから、悪気があって泣かせるわけじゃないのは、少なくても私や片野さんは知ってますので」

「ありがとう」

 一瞬驚いた顔をしたけれど、すぐにいつも通りの顔で頷く。

会議室はまだ誰も来ていなかったので、ブラインドを上げ空調を確認してから珈琲の準備をする。

「社長って最初は怖い顔だなって思ったんですけど、いろんな一面を見たからか私は全然怖くなくなりましたよ。せっかく格好いいのに、勿体ないですよね」


「何が勿体ないんだ?」

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