眼鏡をかけるのは、溺愛のサイン。
よく通る心地よい声で、攻撃された。微かに香る上品な香水と、糊が効いた外国のブランドスーツ。腰の位置が私の知っている誰より高くて、足がすらりとしたモデル体型。
顔だって、皮肉っぽい笑い方だけど一瞬息を飲むほど格好良かった。
高く整った鼻梁、少し釣り目だけど薄いブラウンの瞳は切れ長で鋭い。
薄い唇は人を馬鹿にしてるように笑っているけど、綺麗で――。
「足を出せ」
「ひっ」
思わず恐怖から声を出してしまい、両手で口を覆った。
「だい、大丈夫ですので」
怖くてすぐに逃げ出そうとして、片足ハイヒールにバランスを崩す。
「大丈夫ではないな」
とっさに引き寄せられ、後ろに倒れるように彼の身体にキャッチされてしまった。
「や、大丈夫です、は、離してください」
ホームの一番端っこで、大きな男に捕獲されてしまった。
声を出そうにも、並んでいる人たちから見えない場所まで引きずられてしまう。
「ひと、人を呼びますっ」
「ちょっと待て。それをやるから」