眼鏡をかけるのは、溺愛のサイン。
マンションを見上げると、確かに私が一緒に住んでいる部屋に電気がついている。
私の一人暮らしの時のぬいぐるみが玄関に飾られ、まるで私が選んだかのような可愛い猫のマグカップとかウサギのバスタオルとか増えるけれど、私の趣味ではなく彼が選んでいるのは、内緒だ。
うちの両親に『結婚を前提にお付き合いしています』と堂々と言った彼はその足で婚約指輪を買ってくれた。そして結婚式はまだ先だけど入籍だけはしようと、プロポーズもされた。
そもそも最初からプロポーズみたいだったから、驚かないし私も嬉しかったので問題はない。
正直、嬉しくて今にも天に召されてしまいそうだ。
「お帰り、紗良」
急いで帰ったけれど、辰巳さんは普通に出迎えてくれた。
「俺も今帰ってきたところだったんだ。ちょうど良かった。着替えておいで」
おかしい。いつもならおかえり、と出迎えたと同時にキスしてくれるのに。
「ありがとうございます。でも先に鞄置いてっと」
「紗良、また敬語になってる。家では禁止だろ」
「ごめんなさい」
と言いつつ、不自然な場所はすぐに分かった。
いつもスーツの上着はすぐにハンガーにかける彼が、今日はテーブルに無造作に置いてあった。
ので、ジャケット持ち上げると、大量の結婚式場のパンフレットが置かれていた。
「ばれたか」
「今日、早く退社したのってこれを集めてたの?」
「まあ、実際の建物を見てから持って帰りたかったからな」
「辰巳さん……」